抗がん剤4回目 前半——体も心も限界に近づいてきた話

この記事では、Yoshの抗がん剤4回目の体験を書いています。

ここまで、過去の大変だった記憶をたどりながら書いてきましたが、やはり、つらかった思い出なので、記事を書き進めるのに心にハードルが出来てしまいました。
でも、今生きていることに感謝し、経験を共有することで誰かのためになったら嬉しいと思い書いていきます。
よろしくお願いします。

3回目の治療を終えてから、Yoshは「回数を重ねるごとに副作用が強くなる」という現実を、身をもって体験していきました。

待機時間は4週間から6週間に——回復を待つ魔の2週間

R-CHOPの標準的な間隔は、4週間おきです。でも、3回目の治療終了から更につらさが増し、体は明らかに悪化していました。

主治医との相談の結果、通常の4週間スケジュールから2週間遅らせて、身体の回復を待つことになりました。ただ、実際に2週間待った結果、体が劇的によくなったわけではなく、逆に長く待ったために恐怖感が増してきました。さらに、倦怠感、手足のしびれ、味覚の麻痺で、気持ちはどんどんダダ下がりに。

味覚の麻痺について、前回の甘いものが苦く感じる感覚は少し戻ってきていて、視覚から甘いものを認識して、味覚はなんとなく「甘いんじゃない?」みたいな感覚が戻ってくるようになっていました。

今回は塩味が分からなくなりました。どういう感じかというと、塩味のものを食べると、「味なし」に変換されました。これはYoshの長い人生の初体験。
少し詳しく説明させてください。
目で見ているのはおせんべいなので、”しょっぱい”を期待している自分(脳と気持ち)がいる。
食べると、口の中からいつもならしょっぱいを感知するセンサーみたいなのがある事に、この時初めて気づきました。今まで当たり前に行っていた一連の動作です。

結果、お気に入りのおせんべいを食べても味が分からないという結果が返ってくる。
これ、結構面白いなあ、と思ったのを思い出します。

そして、口内が敏感になっていて、硬いものを食べると歯茎、口内が痛いので、今回からはおせんべいや大好きなサラダ(生野菜)が食べれなくなっていきました。

治療そのものは変わらないのにつらさは増す一方

血管探し、点滴、薬の順序——治療の内容自体は、3回目と同じです。でも、この頃から、だんだん記憶が飛んだり、自分が今何をしているのか分からなくなったりしてきたんです。

今回の治療も、1日目は頑張って、自分を鼓舞して病院に行きました。本を読んだりスマホを見たりする集中力はとっくになくなっていました。なので、治療が終わるまで3時間以上、点滴が落ちていくのを眺めたり、寝落ちたりしてやり過ごしました。

そして、会計を済ませて病院を出て、ホテルに向かう。
もう、身体が言う事をきかないし、足は痛くて、うまく歩けないし、倒れるかもなぁ。。。とか考えながら、とにかく無理やり体を動かすYosh操り人形化みたいになっていました。
昔、柔道をやっていた時に習得した、技をかけられて落ちそうになったときに落ちないように耐える方法で、耐えながら全集中力を集結して移動する感じです。分かりずらいですね。笑。

前回とは違うホテルなので、場所を探すところから大変でした。夕方汗だくになって、フラフラになりながら、やっと見つけたホテルにチェックイン。部屋に入った辺りまでは記憶がありますが、その後は記憶が飛んでいて、全身が言うことをきかなくて、いつの間にか寝落ちてしまったよう。起きたら朝の4時でした。

ホテルで寝落ち

そこから起きて、お風呂に入って汗を流す。こういった何でもない一連の動作が思うようにいかなくて、普通なら30分もあれば出来るような動作が1.5時間くらいかかってしまい、結局朝の7時近くになってしまった。寝落ちた時の数時間寝ただけで再度病院に向かうことになります。

ラッキーなことに、このホテルの周りにはコンビニ等たくさんあったので、おにぎりを買って、かじりながら病院に向かいます。
いつもならおいしいとか、しょっぱいとか味を感じるのに、ほとんど味は感じない。でも、薬を飲むので何か胃に入れなくてはいけない、それだけの理由で胃に食べ物を入れ込む行為です。食べ物の味を感じるという感性はとても大事なのだと思いました。

2日目の治療では、同じように血管を探すところから始まりました。看護師さんが何か言っているのですが、もうYoshは正常な人間のモードを保持できず、うわごとに近い何かをモゴモゴ言いながらそのままベッドに沈み込みました。

病院のベッドの上で 病院のベッドの上で

どのくらい時間が経ったのか。トントンと、肩をたたかれ、「点滴が終わりましたよ」という看護師さんの声に起こされました。朝ごはんから何も食べていないのに、お腹もすかないし、抗がん剤の副作用なのか、胃も腸もムカムカして、吐くものがないのに吐きたい感じに。まあ、吐くものがあっても、もったいないので必死に我慢しますが。笑

そんな状態の時に、ふと前回の記憶がよみがえってきました。
治療終了時に点滴のチューブをギュッと雑に抜かれて、飛び上がるほど腕が痛かった。
それなのに、その看護師さんは痛いと感じている患者に無関心でした。抜いた直後から、刺したあとが腫れあがって、その後真っ黒にうっ血して、なかなか治らなかった経験がありました。そういう小さな積み重ねが、心にも傷を残していく。

この頃、色々な事がうまくいかないと感じていて、些細な事がとても気になったり、時にはネガティブに感じるようになってきました。
人の心と体はお互いに影響し合っているのだと思います。
例えば体の具合が悪いと心も引っ張られて、落ちていってしまう。
心が疲れたり、傷ついたりすると、身体に影響を及ぼすのだなあと、実感しました。
そしてこの頃のYoshは、きっと、世界で一番不幸のどん底にいる感覚だったのでしょう。

フラフラする体をどうにか自分で支えて、壁に何度かぶつかりながら、トイレに行って、自分を鼓舞して歩きだす。治療の記憶はそんな感じです。

爪と足——体の外側に現れてきた変化

髪の毛は、もうほぼ全部なくなっていて、帽子生活は続いていました。暑い夏なので、髪の毛のない頭から汗が帽子を通過して落ちてきます。帽子の中にタオルを詰め込んだり、応急処置として生理用ナプキンを前後に貼ったりして過ごしていましたよ笑。
ナプキンを貼ると頭の前後のシールドになるし、結構汗を吸ってくれました。しかも、帽子がピシっとなって、寝転がっても脱げないので便利でした。
実は後で知ったのですが、今は医療用帽子や、関連のグッズがたくさんあります。
帽子の中の汗パッドも売っているので、生理用ナプキンでなくてもいいみたいです!笑

爪の変化は、4回目で一段階アップグレード。
3回目までは、爪には白い線がうっすらと出ていただけでした。今回から、深く、強く線が入るようになってきました。横線がはっきり入って、次第に線の辺りと爪全体が黒っぽくなっていく。

爪が黒く変化


爪が伸びてくると、線の部分は割れて剥がれていく。爪にこんなダメージを与えるって事は、とても強い薬だということですよね。
更に、よく爪がはがれる事ってあると思いますが、この時の爪のはがれ方は、なんか爪が伸びていないのに白い部分が広がっていく感じ?
爪側ではなくて、爪についている肉側がはがれる感じでした。

指先を見るたびに、体の中で何かが起きている実感が増す。脱毛は「見た目」の変化だったけれど、爪の横線は「内部に強い刺激を与えている事を理解するためのサイン」のように感じました。

4回目で特にひどくなったのが、足のしびれです。3回目から感じていた足のしびれと痛みが、4回目以降、一段階エスカレートした感じ。夏なのに履けるのはスニーカーだけでした。足裏に何かが当たることで痛みを感じます。そしてその痛みは足裏にとどまらず、ふくらはぎ、ももの辺りまでまるで電気ショックの拷問でも受けているかのように、伝わってくるのです。
靴下を履かないと履物が履けなくなり、靴下ってこんなに足をサポートしてくれるんだと改めて感心しました。サンダルのように裸足で履く履物は、外部からの刺激が伝わるので痛くて歩けません。

そんな足の痛みは病院でも感じることになります。
外来治療で使用するベッドは2種類ありました。通常入院したときに使うパイプベッドと、長椅子のような簡易ベッドがありました。長椅子のようなベッドはリクライニングができて、上半身を少し起こした形で点滴を受けられるのですが、足で支える用の棒状のクッションがついています。そのクッションで自分の体重を支える感じになるので、数時間点滴を受けている間中足裏が痛いのです。そのため、看護師さんに事情を話して通常のベッド限定にしてもらいました。

小さな、どうでもいいような事に思えるかもしれません。でも、3時間以上ベッドの上にいる時間、足に何か当たり続けるのは、耐えがたいつらさです。治療を通じて学んだ事——自分を大切にしてあげることは、意思表示をすることで叶えられる。4回目で、Yoshはもう一度それを学びました。

そんな状態の中で、頭の片隅に——「なんでこんなことを、続けているんだろう」と考えが浮かび始めてきます。つまり、何に、どこに向かって頑張っているのかが分からなくなってきたのです。

答えは簡単に出るものではない。話が長くなってきたので、この話は、次の記事に書いていきますよ。

これから治療を受ける方へ(体のこと)

治療間隔の調整は相談できる
体調が追いつかない場合は治療のタイミングを標準治療の範囲内で延期するの選択肢がある。恥ずかしがらず、主治医に伝えてみてください。

爪の変化は出ることがある
横線や色の変化は、抗がん剤治療中に起こりうる副作用のひとつ。気になったら担当医に見せてください。

ほくろの増加
もう一つ抗がん剤後の副作用の一つで、ほくろが出現する事があると言われました。
腕や足に今までなかったほくろが増えました。
最初は薄い色のほくろがいくつか、最近は確認できただけで濃くて大きなほくろが、5個以上10個未満という感じです。

足のしびれ
しびれに対応できる薬はないと言われました。
自分で調べて、主治医にツムラの107 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を処方してもらいました。
劇的な効き目は感じませんでしたが、飲んだ方が気持ちも含めていい気がしていました。
「我慢」より「伝える」方が、長い治療では楽になることがあります。

まとめ

4回目は、3回目よりつらかった。つまり、回を重ねる毎につらくなっていく。

2週間遅らせて回復を待っても、体調は前回の時より悪い感じがした。
爪の横線、足のしびれの悪化、味覚異常——小さな変化が積み重なって、日常生活をじわじわと狭めていきました。

それでも、4回目は乗り越えた。きれいな前向きなオチではないかもしれません。でも、Yoshにとっては正直な記録です。

同じ治療の途中にいる方が、この記事を読んで「自分だけじゃない」と感じてもらえたら、少しは意味があるかなと思います。

次の記事では、4回目の治療中に心が折れそうになった話、そして「続ける理由の根拠」について書いていきます。